高山厚子のウィーン菓子物語

ウィーンの散歩(前編)。
 
ザルツブルグから帰ってきた8月半ばのウィーン。もうすぐ夏休みも終わりというのに、街はまだまだ観光客でごったがえしています。

「ウィーンは不思議な街で、訪れた人を虜にしてしまうものがあるんだよ。そう、たとえは悪いけれど、麻薬のようなものかもしれないね」、と私の音大時代の今は亡きヴァイス教授の言葉をこの光景を見る度に思い出します。かく言う私も28年前に初めてウィーンを訪れて以来、この街のふるさとを思わせるような不思議な魅力に、今でも取り憑かれているような気がします。シーツィンスキーのヴィーナーリート「ウィーン我が夢の街」の一節にあるように、「もしも、この美しいウィーンを離れることになったら、私の思いは、永遠に続くだろう」とあります。ローマのトレビの泉に後ろ向きでコインを投げ入れると、またローマにこられるという言い伝えがありますが、私もウィーンから帰るときは、わざと何かをやり残した気分で帰国することにしています。そうすると、いつかまた、必ずウィーンにこられるような気がするのです。少し感傷的になってしまいましたが、今日は観光客に混じって、私のお気に入りのコースをご案内いたします。

●インペリアルホテル
  ライトアップされた外観

 
●インペリアルホテル
まずは 国立歌劇場から街路樹が立ち並ぶリング(環状通り)を左に折れてしばらく歩くと、ブラームスやブルックナーのお気にいりだった、インペリアルホテルが右手に見えてきます。ホテルの正面玄関の左脇には、夏の間だけ併設される花に囲まれたテラスがあります。
 
 今日は時間も早いせいか、お客はまだ誰もいません。「グリュースゴット(こんにちは)!」、テラスにいるすがすがしい目をしたボーイにこう挨拶されると、少し早いですけれど、お茶が飲みたくなってしまいました。ここのメランジェ(泡立てたミルク入りコーヒー)はアールヌーボー調の白いカップにいれられてくるので、ミルクの泡を、ことさらおいしそうに引き立ててくれます。ウィーンの諺に「冷たいコーヒーは、女の子をきれいにする」という言い伝えがありますが、..... 。
これは、「何でもおいしいうちにいただきなさい」という戒めのようですので、やはり温かいうちにいただきましょう。さて、午前のヤオゼ(おやつの時間)はこのぐらいにしましょう。このホテルの角を右に曲がると、ニューイヤーコンサートで有名な、ウィーン楽友協会の所に出てきます。ここの大ホールについては前にもご紹介しましたが、もうひとつ、ブラームスザールという小ホールがあります。大ホール同様、抜群の音響効果も手伝ってか天上を思わせるような響きに、心が洗われるようです。
さて、
●ヨハン シュトラウス像
楽友協会を後にして、リングにもどり、今度はトラム(路面電車)に乗って、ヨハン シュトラウスの像で有名なシュタットパーク(市立公園)へ行ってみましょう。おやおやこんな早い時間だというのに、記念撮影をする人が後を絶ちません。
 もし時間があったらウィーン流にベンチに座ってボンヤリ過ごすのもいいものです。
   
 またこの園内にはシュトラウスみずから演奏したクアサロンもありますので、ゆっくりと過ごされることをお勧めします。

さあ、それでは本日のハイライト、ドナウ川遊覧です。乗船場であるシュヴェーデンプラッツからドナウ本流のライヒスブリュッケまでのコース。
 もうひとつはライヒスブリュッケから、フロイデナウ水門でドナウ運河入りをし、クンストハウスヴィーン、そしてシュヴェーデンプラッツに戻ってくる大周遊の二通りがありますが、きょうはどちらのコースにしましょうか。シュトラウスの「美しき青きドナウ」を口ずさみながら、
 小旅行をはじめませんか。「帽子をとばされないようにね」  グーテ ライゼ(良い旅を)
 
「私の帽子(マイン フートゥ)」
レモン風味のウィーン風レアーチーズケーキ 
 
 今月は夏をイメージした帽子をケーキで、作ってみました。
 スポンジ生地の作り方は第4回目でご紹介しましたので、そちらをご覧下さい。
 帽子の中には、トプフェンオーバースクレーメという、オーストリアのレアーチーズクリームを流し入れます。「トプフェン」とはオーストリアの方言で、牛乳の蛋白分を絞り集め、脂肪分を加えた白チーズのことです。
 日本では入手が難しいので、ここではフロマージュブランを使いましたが、カッテージチーズでも代用できます。カッテージチーズを使うときは、必ず裏ごして下さい。
 レモンが効いていますので、暑い夏でもさっぱりと戴けます。レアーチーズクリームは少し余裕を持って作りますので、余ったら、グラスに入れて冷やして、召し上がって下さい。
 
材料(直径9cmの帽子2ヶ分)

A) ロール生地(35cm X 30cmの天板1枚分)
卵           3ヶ
薄力粉        60g
グラニュー糖      60g
レモンの皮、塩、バニラエッセンス  各少々

B) トプフェンオーバースクレーメ(レアーチーズクリーム)
フロマージュブラン(脂肪分0%)    100g
粉砂糖       40g
ゼラチン       4g
生クリーム      150cc
レモンの皮のすりおろし  少々
レモン汁       大さじ 1・1/2杯

C) 飾り 
細工用マジパン      少々
食用色素 黄色、緑   少々
リボン            適宜

 
準備
1: あらかじめA)のスポンジ生地を焼いておいて、直径12cmと直径9cmのものを、それぞれ2枚ずつ丸型で抜いておく。
2: 直径9cmに抜いた方は、直径約7cm、高さ約3cmのドーム型に敷き詰める。
3: マジパンを1mm厚さにのばし、花型で3個抜いておく。
残りのマジパンは、黄色と緑色に着色して花の芯と、葉を作っておく。
 
作り方
  B) のレアーチーズクリームを作る
1: フロマージュブランに粉砂糖を2〜3回に分けて加え、さらにレモンの皮、レモン汁の半量を加え混ぜる。
2: あらかじめ水につけておいたゼラチンを湯煎にかけて溶かし、残りのレモン汁も加え、さらに(1)の少量を加えて具合をみてから(1)に戻し混ぜる。
3: あらかじめ八分立てにしておいた生クリームの1/3量を(2)に加え混ぜ、残りの生クリームを加え混ぜる。
4: ロール生地を敷き詰めたドーム型に(B)で作ったレアーチーズのクリームを流し入れ、2時間ほど冷蔵庫で冷やし固める。
 
仕上げ
1: あらかじめ用意しておいた直径9cmに抜いたロール生地を帽子のつばにして、その上に(B)-(4)で作ったものを型からはずしのせる。
2: 写真を参考にして、(1)にリボンとマジパンで作った花をのせる。
高山厚子のプロフィール
東京都出身

フェリス女学院大学音学科ピアノ科卒業後、ウイーン・コンセルヴァルトワールに留学。シュタートラー教授にピアノを師事。
ウイーンガストロノーミッシェ・インスティテュートにおいて、ヴォルフガング・カルプヘン氏にウイーン菓子を師事する。
スイス・バーゼルにおいてカール・シルマン氏にマジパン細工を師事する。
その他、デュッセルドルフ、コンディトライ カフェ・マウス
ハーゲン、カンデルン、カフェ・ラコステにおいて研修を積む。
日墺文化協会会員 
日墺文化協会主催「ウイーンのお菓子教室」講師
高山厚子著書「ウイーン菓子12ヵ月」文芸社
 
日墺文化協会(http://austria.gooside.com/)へはこちらから
 
 

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