高山厚子のウィーン菓子物語

ウィーンのクリスマス
 
 12月に入ると主な通りはイルミネーションに包まれて、ウィーンの街はクリスマス一色になり、クリスマス市に足を運ぶ人で賑わいます。子供達にとっては12月1日の朝が来ると、大切な仕事が待っています。
 そう、アドベントカレンダーの1日の窓を開ける日なんです。このカレンダーには1から24の数字が書いてあり、毎日その日と同じ数字の窓をあけるのが彼らの日課なのです。そして、24の窓を開.けると、クリスマス当日と言う訳です。日本の子供達と違ってオーストリアの子供達は、あまりプレゼントを貰う習慣がありません。ですから、誕生日とクリスマスは彼らにとってとにかくビックイベントなのです。
 
 1日の朝、目が覚めると、とにかくワクワクしてベットから飛び起きたもんさ。」と懐かし気に小さい頃の話を聞かせてくれたウィーンの友人の話をこの時期になると、思い出します。そして料理上手な母親たちは、24日のために腕によりをかけてクリスマスケーキや、クッキーの準備をします。クリスマスのために、作り置きをしておくなんて、ちょっと日本のおせち料理的な感覚がしませんか?これは、「日頃忙しく家事に追われているハウスフラウ(主婦)達を少しでも、家事から開放してあげようという心優しい(?)僕達の生活の知恵なのさ」、なんて得意気に友達が言っているのをきいたことがありますが・・・。まあ、何処も年末の慌ただしさは同じです。

 オーストリアのクリスマスでは、今回ご紹介するヴァイナハツシュトレンや、沢山の種類のクッキーをいただきます。このシュトレン、発祥の地はドイツのドレスデンで14世紀頃から食べられていたという歴史の古い伝統的なクリスマス菓子で、キリストがお生まれになった時に布にくるまれていた姿を形取った菓子である、という節があります。ここドレスデンでは12月の第1土曜日になるとシュトレン祭と言って、パン屋さん達がとてつもなく大きなシュトレンを作って、市内を練り歩く行事があるそうです。
 ひとくちに、シュトレンと言ってもその種類は多く、今回のレシピにあるようにレーズンが主なものや、トプフェン(クワルク)という低脂肪のチーズを入れるものなどさまざまです。一見、あまり見栄えの良くないクリスマスケーキですが、ドライフルーツにスパイスが何とも言えずうまく絡み合って、一度食べると病みつきになってしまうくらいです。
 シュトレンの他には、12月の初めになると色々な種類のクッキーを焼き始めますが、中でもヴァニラキプフェルはウィーンっ子の大好物です。このクッキー、「バニラ味の三日月のクッキー」という意味です。ウィーンでは、良いハウスフラウ(奥さん)の条件が、「美味しいヴァニラキプフェルを焼けること」、と言われているくらいですから、人気のあるのも何となく頷けますね?
 

 さて、シュトレンを焼いている間に暖かいオーブンの前にいすを持って来て、クリスマスカードでも書きましょうか。こちらの人達はクリスマスカードまで手作りをする人が多いので、今年は私も見習って作ってみましたのでご覧下さい。


 

 いかがですか?。オーストリアの片田舎のクリスマスをイメージしてシュガークラフト(砂糖菓子)で、つくってみました。実物をご覧頂きたいくらいですけれど、カードでがまんしてくださいね。しばらくご無沙汰しているあの人に、クラスメート達に、先生達にも。そうそういつもお世話になっていた大家さんにもクリスマスカードを送らなくては・・・。日頃は筆無精の私も年に一度のこの時だけは、ちょっとウキウキしながら書いています。

市庁舎
市庁舎のクリスマス市

 だんだんシュトレンが焼けるいいにおいがしてきましたけれど、もう少し焼き色をつけましょう。これは今年も知人のクリスマスに呼ばれていますので、プレゼントに持っていくんですよ。ウィーンのクリスマスは家族や友人を招いて、静かに祝います。昨年も先生のお宅に招待されましたが、居間に大きなもみの木が立てられて、木にはローソクが飾られていました。
皆でツリーの周りに輪になって、先生のご主人がローソクに灯をともすのを皆、固唾をのんで見守っていましたが、全て灯された時の感動的だったこと言ったら・・
あの光景は今でも目に浮かびます。

 おっと、シュトレンが焼き上がったようです。あー、焦げなくて良かった!皆さんも気をつけて焼いて下さいね。
 
 ・・・おや、ドアのチャイムが鳴っています。誰かと思ったら、煙突掃除屋さんです。こちらでは、クリスマス前に煙突掃除やさんたちが、一軒ずつクリスマスの挨拶に来てくれます。彼らにちょっと触ると良い年が迎えられるという言い伝えがありますので、握手をしてもらいました。フフフ・・・、来年はどんな年になるのでしょうか?・・・

それではみなさま、少し早いですけれど、フローエ ヴァイナハテン!(クリスマスおめでとう)
来年も美味しいお菓子に巡り会えますように。

 
シュトレン
 
材料(約5人分)

小麦粉 (ふるっておく)    150g
粉砂糖        18g
イースト          4.5g
牛乳  (人肌に温める)     60g
無塩バター      75g
塩            1g
レーズン             70g
オレンジピール    30g
レモンピール       10g
皮付き丸粒アーモンド       20g
アーモンドエッセンス  2滴
バニラエッセンス      適宜
シナモン             適宜 
カルダモン       シナモンよりは少なめに。
ラム酒        大さじ2〜3杯
飾り用無塩バター(溶かしておく)          約30g
粉砂糖                       適宜
バニラシュガー                   適宜

準備
1: オレンジピール、レモンピールを細かく切り、レーズンと一緒にボールに入れて、ラム酒に漬けておく。(2〜3日前に漬けておく)
 
作り方
1: ボールに小麦粉を入れ、真ん中にくぼみを作っておく。
2: 薄人肌に温めた牛乳大さじ2杯とイースト、小麦粉少々を小さめなボールに入れて良く混ぜ、ドロドロの状態にして、1)のくぼみに入れ周りの粉をその上に軽くかける。固く絞ったぬれ布巾をかけて、温かい場所で15分程発酵させる。
3: 2)に、残りの牛乳、バター、塩、エッセンス類、シナモン、カルダモンを入れて、手でよくこね合わせ、生地がボールから離れるようになったら、これを台の上で5分ほど混ぜ合わせ、耳たぶくらいの固さになったら丸めてもう一度ボールに戻し、布巾を書けて、又15分程発酵させる。
4: 3)にドライフルーツ類とアーモンドを加え混ぜ、もう一度よく混ぜる。
5: 4)の生地を20×13cmの楕円形にめん棒で伸ばし、重なりを2cmほどずらして2つ折りにし、シュトレンの形にする。これを天板にのせて再度、発酵させる。
6: 5)をあらかじめ180度に温めておいたオーブンで45〜50分ほど焼く。
7: 6)が焼き上がったらすぐに溶かしバターをハケで塗って、初めにバニラシュガーをふる。 
8: 7)が少し冷めたら、粉砂糖を全体にふり、シュトレンが完全に冷めたら粉砂糖をたっぷりとふる。
高山厚子のプロフィール
東京都出身

フェリス女学院大学音学科ピアノ科卒業後、ウイーン・コンセルヴァルトワールに留学。シュタートラー教授にピアノを師事。
ウイーンガストロノーミッシェ・インスティテュートにおいて、ヴォルフガング・カルプヘン氏にウイーン菓子を師事する。
スイス・バーゼルにおいてカール・シルマン氏にマジパン細工を師事する。
その他、デュッセルドルフ、コンディトライ カフェ・マウス
ハーゲン、カンデルン、カフェ・ラコステにおいて研修を積む。
日墺文化協会会員 
日墺文化協会主催「ウイーンのお菓子教室」講師
高山厚子著書「ウイーン菓子12ヵ月」文芸社
 
日墺文化協会(http://austria.gooside.com/)へはこちらから
 
 

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