〜私の選んだ秋の七草 編〜

おもしろクラブ「Field-Day」代表
苅野 玲子

オミナエシ
秋の花、といえば七草だ。山上憶良が詠んだ歌のなかに出てくるのは、ハギ、ススキ、キキョウ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマである。 が、ここでは私が自分で選んだ秋の七草をご紹介しよう。

バギ

ススキ
 
まず、ハギススキ、ナデシコ、オミナエシはすべてよしとしよう。ハギとススキは皆さんよくご存知の花である。 秋を代表する花達である。ハギをみると、秋がやってきたなと思い、ススキを見ると秋も深まってきたなと感じるのである。
 

カワラナデシコ

ナデシコとはカワラナデシコのことで、これは山に行かないとお目にかかれない。
カワラといっても河原にあるのではなく、山道のふちに咲いている。ピンクの愛らしい花である。オミナエシもそうだ。いまでは花屋で売っているかもしれないが、黄色の小さな花が集まったようすは山のあせた緑と重なって秋の深まりを感じさせる。

クズを七草からはずしたのは、その繁殖力の強さによる。どこにでもある。ほんのちょっとでも根が残っていればどこからでも生えてくるのである。そしてまわりの木に絡み付き、被さり、すべてをその葉のなかに覆い隠すのである。が、花は濃い紅色で強烈な芳香を放つ。根は葛で親しまれ、葛餅、葛湯、くずきりになる。いまではこの根を掘るのが非常に大変なので、代用品を使っているものが多いらしい。

フジバカマはどうだろう。もともと奈良時代に中国からやってきた帰化植物で河原などに咲いていたらしいが、いまではほとんど見られないということである。河原はほとんど護岸され、繁殖力の強いものしか生き残れない。 もともと山の寒い地方にはないような気がするのである。 私が選んだ秋の七草は長野の1,000メートル前後の山でのことであるから、フジバカマではなく、そっくりさんのサワヒヨドリが咲いているのである。

キキョウはけっこう好きな花である。なぜはずしたか。それは自分の通っている山に咲いていないからである。残念なことに。

ワレモコウ

それでもっとも心そそられる花、大好きな花、ワレモコウを仲間に加えることにした。なぜあの深いボルドー色のくりくりした花にみいられるのか皆目わからない。が、そそられるのである。

あとはクズとフジバカマの代わりに、タムラソウフシグロセンノウを選んでみた。 タムラソウはアザミと色も形もそっくりだが、葉の形がちがい、とげがなくアザミとは違う種類の花である。

タムラソウ

フシグロセンノウ
 

今ではやはり少ない。フシグロセンノウはオレンジの鮮やかな花で、とても山野草とは思えない風情である。この花が、山の木々の暗がりの中に、まるでそこだけ日があたっているかのようにポツポツと咲いているのは美しいだけでなく、なにか不思議な感じがする。身近な山でも、木を生やし育てるだけでなく、こんなこともできるんだぞというような山の底力を感じさせるのである。 私の選んだ秋の七草、ハギ、ススキ、オミナエシ、カワラナデシコ、ワレモコウ、タムラソウ、フシグロセンノウ。



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