-玄関アプローチ−
建築家 野口信彦

家に訪れる人を門扉から玄関へといざなうアプローチは、その家の顔となる空間ですから、花や緑などの植栽や建築的なアイデアで、住む人の感性を反映させたいものです。

都市の郊外住宅地に数多く見られるパターンとしては、敷地境界近辺に門扉を設け、その脇に表札、郵便受け、インターホンなどを設置した住まいですが、気になるのは、建物と門が調和していないことです。建物が低いのに門が高かったり、門が洋風なのに建物が和風だったりします。

特に門は開放的すぎてもプライバシーに欠け、プライバシーを守ろうと思うと閉鎖的になります。とかく装飾過多で閉鎖的な門扉は、権威的で、あまりいい印象を人に与えません。

門扉はすこし低めに押さえて格子のワイヤーなどで塀つくり、植栽などで演出すれば、親しみがもて、美しい緑の街並を形成することができます。

狭いアプローチもアイデアを活かして...
楽しく、個性的に。 敷地の狭い日本の住宅事情のなかでは、門扉は図1のように、玄関のほぼ正面が多いようです。この場合は、玄関ドアを開けると家ののなかが見える欠点があります。  
   
図1
  門から玄関までの距離が短い場合には、図2のように、門扉と玄関の位置を少しずらし、アプローチの向きを変えたり、曲げたりして、一直線にならないようにします。こうすれば、アプローチに植栽スペースも生まれ、気分のいい空間になります。
図2
   
敷地にある程度余裕がある場合、図3のように門を設置すれば、門扉の存在を意識させることなく、玄関まわりをおしゃれな雰囲気にすることができます。  
   
図3
玄関アプローチ

玄関アプローチは、人の気持ちをなごませる空間。 玄関まわりは、人の出入りが多い場所なので、人が歩くところは、コンクリート、タイル、レンガなど硬質の材料を使います。

しかし使用範囲はなるべく必要最小限にし、露地部分を残すようにすれば、花や緑の植栽スペースが広がります。 玄関アプローチの設計にあたっては、まず出ていく人、入ってくる人の気持ちを楽しませる空間であることが大切です。

 

 
そのためには、図4のようにアプローチをジグザクにしたり、カーブにしたりして変化をもたせ、建物の際や隣地との境界部分に露地部分を残して植栽すれば、歩くとき視線を楽しませることができます。 露地部分がない場合には、歩くのが邪魔にならないところに草花の鉢植えを置けば、同様の効果が得られます。
 
 
図4
   

また郊外では、造成された敷地や、道路と建物に高低差があり、階段状になつている住宅をよく見かけます。こうしたアプローチは、階段に沿って両脇を花壇にするだけで、立体的で雰囲気のあるアプローチになります。(図5)階段が広い場合には、小さめのコンテナを段ごとに置き、色違いの花を交互に並べるとリズムがでます。

 

図5
階段が広い場合には、小さめのコンテナを段ごとに置き、色違いの花を交互に並べるとリズムがでます。
 
玄関まわりを花で飾る
玄関ドアの前に、雨などを防ぐための小さな屋根(庇)をもつ家がありますが、庇の側面の壁に図6のようにワイヤーをクロスに張り、ツルバラなどをからませれば、玄関が華やかになります。 また、インターホンや表札など、人の視線が集まるところには、草花を寄せ植えしたハンギングバスケットを吊し、それに門灯をからめれば、夜でもこころのなごむアクセントになります。  
 
図6
前回の生け垣やフェンス、今回の玄関まわりの工事金額は、建築工事の見積りでは外構工事という項目ですが、外構工事は別途となっている場合があります。これから住宅を新築されるときは、全体の建築工事費のなかで、バランスよく計画にいれておくことが大切です。

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