男の雑貨
文・写真 和田州生

ユリウス・ビットナー
 
墓標は、自分の人生を精一杯生きた証
なぜ、私はお墓が好きになったのだろうか。いつ頃からお墓に興味を覚えはじめたのだろうか。ときどき自問しています。
家族の話では、私が小さい頃に、医者も見放したぐらいの重病から立ち直った経験が関係しているかも知れません。私の写真活動の節目節目にお墓の写真で生きる勇気をもらいました。
はっきりと記憶しているのは、1964年日本大学芸術学部の卒業制作のために訪れた最南端の島「与論島」の白い珊瑚の砂浜に作られたお墓との感動的な出会いからだったと思います。そこでの写真が、その後の写真家への道に進むきっかけとなりました。1967年ドイツ・ミュンヘン写真学校(現在、応用科大学)マイスターコースに入学できたのも、与論島でのお墓の写真などのお陰です。
老女とお墓の写真を見た校長が、私の目の前で即座に入学許可証を発行してくれました。
ミュンヘンでの学生生活のなかで、時間がとれるときには近くのFriedhof(墓)に出かけ、名もない墓標からその人がどんな人生を歩んだのか推理し、撮影するのが楽しみになりました。Friedhofのなかを歩いていると、心が穏やかになり、自分を見つめ直すのに合っていました。
「生きること」「死ぬこと」を考えるのには、最適な場所かも知れません。
帰国後の写真展やJPS展で、私は墓を題材にした作品を出品。展示されました。
その結果、写真を仕事にする自信につながり、いまの私が存在していると思います。
ドイツ、フランス、オーストリア、スイス、ロシアで撮影した愛され続ける人々「愛の墓」は、すくなからず私たちに影響を与えてくれた人々です。
生きているときは恵まれなかった人、戦争で国を追われた人、裏切られ絶望した人、自分で死を選んだ人、愛された人、愛が叶えられなかった人、それぞれに精一杯自分の人生を生きた証の墓標だと信じています。
私も「限りある人生」を自分なりに精一杯生きてみたいと思っています。
人間に乾杯。家族に乾杯。そして自分に乾杯。
 
クラシック音学家の愛され続ける墓標(オーストリア編)
ウォルフガング アマデュウス モーツアルト
はじめに私たち日本人に親しまれ、愛されている偉大なクラシック音楽の作曲家や指揮者の方々の「愛されつづける墓標」を紹介いたします。
それでは音楽の都オーストリア・ウイーンに眠る多くの天才音家を訪ねてみましょう。まず頭に浮かぶのはヴォルフガング・アマデウス・モーツアルトではないでしょうか。天才音楽家の名を十二分に発揮し、自由奔放に生き、多くのすばらしい音楽を残し、短い生涯を終えたモーツアルト。ひっそりと聖マルクス墓地に眠っています。
つぎに訪ねたのは、ウイーン南駅から60分のアイゼンシュタットに眠るヨーゼフ・ハイドンの墓です。私たちが大好きなベートーベンもハイドンが見いだしてくれなければ、あの「交響曲第九番」を聴くことができなかったかも知れませんね。ぜひベルグ教会にハイドンを訪ねてみましょう。
フランツ ヨセフ ハイドン

さらに訪れてみたいのはウイーン中央墓地です。
ここにはベートーベンをはじめとする多くの著名な音学家が眠っています。
シューベルト、ブラームス、シュトラウス一家、スッペ・ヴォルフなど、有名な音学家の「愛の墓」です。お好きなお花を持って、訪れたらいかがでしょうか。






グスタフ マーラー ヨハン シュトラウス
   
ヨハネス ブラームス フランツ シューベルト
またウイーンで時間が取れたら、市電38番に乗ってグリンチィング墓地のグスタフ・マーラ
アルバン ベルグ
ーに会いに行ってみませんか。日本ではマーラーが指揮したモーツアルトの曲は大変人気がありました。墓石は、名前だけが刻まれたシンプルさです。「私の墓を訪ねてくる人は、私のことを知っているひとなので、特別自分を知らしめる必要はない」と、マーラーは考えていたようです。ついでにマーラーの妻アルマの墓にも立ち寄ってはいかがですか。
アルマと親交が深い芸術家は、後に名声を得ると言われるのは、何なのでしょうか?不思議な女性として知られていました。夢多き妻アルマに、マーラーも大変だったのではないかと、想像できます。
 
モーツアルトの生まれ故郷、ザルツブルグに出かけてみませんか。
いまやザルツブルグ音楽祭は、世界でもっとも重要な音楽祭として知られています。ここ聖セバスティアン教会にはモーツアルトの父レオポルトやモーツアルトの妻コンスタンツェやヴェーバーの母ゲノフェーファなどモーツアルトに縁の深い方々の墓があります。
ザルツブルグ駅からバスでアニフ郊外の教会墓地には、今世紀最大の指揮者カラヤンの墓があります。わたしがイメージしていた墓とはほど遠く、小ぶりの十字架が寂しそうに迎えてくれました。
あなたなら、どう感じるでしょうか。ぜひ訪ねてみてください。
 
ヘルベルト カラヤン
コンスタンツェ モーツアルト
レオポルド モーツアルト
ゲノベヴァ ウェーヴァー
和田 州生(わだ くにお)
クリエイティブ・ディレクター&写真家

(財)日本写真家協会会員。日本写真芸術学会会員。
1943年 茨城県日立市に生まれる。日本大学芸術学部者新学科卒業後、新聞社特派員としてドイツ・ミュンヘンに駐在。ヨーロッパを中心に写真と記事を発信する。その後バイエルン州立ミュンヘン写真大学マイスターコース入学・卒業(現ミュンヘン応用科学大学)。帰国後、和田州生写真研究所を設立。広告写真を中心に活動。2年後、再びドイツ・フランクフルトに日本の広告代理店駐在所長として赴任。クリエイティブ・ディレクター&写真家として広告制作、出版、商品企画などを担当。個展6回、JPS展などグループ展多数。現在に至る。

主な出版物
◎ 人気現代絵師による「今様羽子板絵競」
◎ かなで書く「小倉百人一首」
◎ 「風還元」大平和正+三人の写真家
◎ 「DER Friedhof愛の墓」出版ピエ・ブックス

 

掲載写真をご希望の方は、
  Smart Garden編集部 担当石原までご連絡ください。
  TEL : 03-3459-0246
  FAX : 03-5403-7481
  E-mai l: isihara@look-line.com


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