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ブリキ缶
文・写真  野呂珍平

人間には、いろいろな人がいる。
明るい人。暗い人。おしゃべりな人。寡黙な人・・・。
僕が好きな人は、素朴で、温かくて、可愛らしくて、のほほんとした人。身近にあるブリキ缶がもし人間だとしたら、きっとこんなタイプだろうと想像する。

そんなブリキ缶を見つけると、思わず欲しくなる。
可愛らしい女性に出会ったような、愛らしさに惹かれるからだ。週末のフリーマーケットなどをブラブラしていると、ときどき可愛らしいブリキ缶に出会う。そんなとき、つい衝動買いする。衝動買いしてもたいした値段ではない。ほとんどが1000円から2000円くらい。
購入したブリキ缶は、コレクションした古いライターや絵はがきなど、小物の収納に使っている。まだプラスチックの容器が登場しない時代は、湿度を嫌う商品のパッケージとして、ブリキ缶が主流であった。クッキーをはじめ、キャラメル、チョコレート、ポテトチップ、コーヒー、紅茶などは、みんなブリキ缶に詰めて売られていた。昔のブリキ缶は、商品ロゴだけでなく、缶にイラストが描かれているものが多い。

僕が持っているなかで、いちばん好きなのは「フラポテト」という商品名のブリキ缶である。高さが25センチくらいで円筒形をしている。ブリキ缶の蓋のつまみが木製なのが気に入っている円筒形の側面には、遠景にダイヤモンドヘッド、手前にココナッツの木とフラガールが2名描かれている。絵は下手だけど、それなりに味がある。恐らく1950年頃。ハワイの観光土産としてつくられた日本製の輸出向け商品だろう。


コーヒー&紅茶のブリキ缶


今回、写真に撮って紹介したかったのだが、家のなかのどこかにまぎれ込んでしまい、見つからなかった。ブリキ缶のなかで、想い出があるのは、「フェイマス・アモス」のクッキーである。いまから25年ほど前。僕が銀座の広告代理店に勤めていたとき、SONYビルのB1に「フェイマス・アモス」のクッキー店がオープンした。オープンした頃は、行列ができるほどの人気店で、黒人のアモスさんが店にいた。クッキーは5種類ほどあった。僕が買ったのは、チョコレートの小さな粒が入っている丸い形のクッキーだった。サクサクした香ばしさのなかに、ちょっぴり甘いチョコレートの味が新鮮だった。

ブリキ缶の蓋の絵は、アモスさんが人さし指を上に突き上げている。その指先に、クローズアップしたクッキーの写真がプリントされていた。アモスさんは明るい性格で、クッキーを買うと、一人一人にたどたどしい日本語でお礼を言った。その後、何年か経ってSONYのB1に行ったら、アモスさんの店が閉店していた。閉店の理由はわからないが、僕は「フェイマス・アモス」のブリキ缶を見るたびに、笑顔のアモスさんを思い出す。


ブリキ缶

フェイマス・アモスのクッキー缶

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