男の雑貨

懐かしのハワイ雑貨。
その1. ココナッツ型のスプーン。
文・写真 野呂珍平
 
男の雑貨
 
晴れた空、白い雲・・・ではじまる「憧れのハワイ航路」が歌われた頃から、ハワイは日本人の夢の島。プレスリーの「ブルーハワイ」や加山雄三の「ハワイの若大将」の映画を観て、僕はハワイへ憧れた。
僕の憧れる気持ちに追い討ちをかけるように、JALパックというパック・スタイルの旅行が登場した。コマーシャル・ソングは浜口蔵之助が作詞し、自らが歌った。「いまや人は空を飛んで、愛しあうときが来た、JALパック西へ行け、東へ行け、北へ行け、南へ行け・・・」と。僕は、コマーシャル・ソングに踊らされるように心が揺らめき、ハワイ行きを決意した。
 
その日はいまから35年前。僕はまだ独身であった。独身であったが、もうすぐ結婚しようとしていた。そこで結婚式は控えめにして、新婚旅行は、豪華にハワイでと考えていた。あの頃、新婚旅行をハワイでなどということは、あまり考えていない時代だった。飛行機は成田ではなく羽田空港から飛び立った。
友人が何人も羽田空港に見送りに来てくれた。「おこずかい」といって、ご祝儀をくれる人。「飛行機のなかで食べてくれ」と、寿司折も渡された。
ホノルル空港では、飛行機のタラップを降りた僕たちを、ローカルのハワイアンが、プルメイラの花のレイを首にかけて迎えてくれた。
爽やかな風にプルメイラの花の甘い香りがミックスされ、ハワイの大気はフルーティーだと思った。
空港からホテルまではバスに乗った。バスはハワイの観光案内を兼ねながら、僕たちをスーベニール・ショップに連れて行く。ホテルのチェックインは午後2時なので、午前中は市内観光ということらしい。
僕たちはほとんど全員が新婚旅行組だから、みんなスーツを着ている。でもハワイにはスーツが似合わない。スーベニール・ショップで取りあえず、男はアロハシャツ、女はムームーを買って着替えた。
なかにはアロハシャツと半ズボンに着替えたが、ビーチサンダルを買い忘れ、黒の革靴を履いたままの人がいて、みんなで笑った。
僕は2軒目のスーベニール・ショップで、柄がココナッツのカタチをしているスプーンを発見。そのキュートなココナッツのデザインに感動した。
それまでは、あたりまえなカタチをした普遍的なスプーンしか見たことがなかったので、このときからスプーンに対する見識が変わった。
小泉総理は、イタリアのオペラを観て感動したが、僕はスーベニール・ショップのスプーンを見て感動した。
ハワイ滞在6日間。青い空、白い雲、きれいな海と、ハワイの自然をおおいに楽しんでいたが・・・。ときおりスプーンが気になった。それは「ほかにも心をときめかせるスプーンがあるのではないか」という思いだ。
僕はスーベニール・ショップを何軒かハシゴした。
一緒にハワイに来た新婚組は、アラモアナ・ショッピングセンターやデューティーフリー・ショップでバックや洋服を買って満足気だが、僕はスプーン探しに時間を費やした。
でも、最初に出会ったココナッツ形のスプーンを超えるほどインパクトがあるスプーンは見つからなかった。
このココナッツ形のスプーンがきっかけになり。海外旅行に出かけると、スーベニール・ショップやジャンク・ショップで気に入ったスプーンを買い集めた。
いまや安物スプーンを100本ほど所有する、スプーン資産家である。

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