男の雑貨

ピンズの効用。
文・写真 野呂珍平
 
男の雑貨
 
ヨーロッパにはピンズやバッジのコレクターが多い。
特にイギリスとフランスにピンズ愛好家が多く、毎週末どこかでピンズ&バッジ市が開催されている。市ではピンズを売ったり買ったりするだけでなく、自分がいらないモノと欲しいピンズを交換することもできる。日本では、フリーマーケットやヴィンテージ・ショップ、雑貨屋などで、ピンズを見かけるがヨーロッパのように専門店はない。
ピンズは、コレクションするより、自分が好きなピンズを身につけることが楽しい。僕はジャケットの襟に2、3個お気に入りのピンズをつけている。
去年の暮れ、銀座のジャズ・バーの演奏会で、偶然20代の素敵な女性と同席した。無駄話の後、彼女から僕のジャケットの襟につけているピンズについて尋ねられた。
 
「その縦縞のバッチは、何ですか」と、彼女。
「あっ、これはイタリアのセリエAのチーム、ユベントスのロゴマークです」と、僕が答えた。すると「もう一つの金色のバッジは」と、彼女。
「これはワールドカップのトロフィーのピンズです。ピンズとバッチは同じように見えますが。ピンズはネックの部分がピンになっていて、ピンを下からフックで固定して止めます。通常針金状の安全ピンで固定するタイプはバッジと言われています」と、僕が説明した。
「じゃあその襟についているのはピンズなのね。あなたはサッカー・ファンですか。私も日本でワールドカップが開催されてから、日本代表の試合は欠かさず観ています。」と、彼女。「そうですか、こんど日本代表の試合が開催されたら、ご一緒にいかがですか」と、僕。「ええ、喜んでお供させていただきます」と、彼女。
こんな話は、めったにあることではないのですが・・・ピンズは自分のアイデンティティを表現するツールとも言える。女性とだけでなく、ビジネスでもピンズが友人をつくるきっかけになったことがある。
 
まだ僕が広告代理店のクリエイティブ・ディレクターをしていた頃。あるクライアントに何回か仕事の打ち合わせに行った。3回目の打ち合わせのとき、相手の担当の方から「いつもジャケットについているピンズが気になっているのですが、社章とはちがいますね」と、尋ねられた。
「このピンズは、コンラン・ショップの会員の配られたピンズです」と、僕が
応えた。
その頃、イギリスのコンラン・ショップが新宿にオープン。僕はいち早くコンラン会員の手続きをしたので、店からピンズをプレゼントされた。
「コンランのピンズでしたか。私もコンラン・ショップには行きたいと思っていました。椅子が好きで、いまテラスに置く木製のベンチを探しているのですが、なかなか気に入ったものが見つからなくて・・・」と、彼がつぶやいた。
僕は、コンラン・ショップに素敵なベンチがあったことを彼に伝えた。
その後、彼はコンラン・ショップを訪れ、お目当てのベンチを購入。僕は彼から感謝され、仕事だけでなく椅子好きの友人として、いまでもおつきあいさせていただいている。
ピンズはコレクションする楽しさだけでなく、身につけることで人と人とのコミュニケーションが広がる男の小道具。できれば自分が好きな趣味、スポーツ、アートなどのピンズやバッジをジャケット、帽子などにつけ、オシャレと人づくりの輪を広げてみませんか。
 

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