男の雑貨

懐かしのハワイ雑貨。
その2. 愛しのフラ・ドール
文・写真 野呂珍平
 
男の雑貨
 
ハワイといえばフラ・ダンス。
はじめて観たのは35年前。ワイキキの浜辺とカピオラニ公園の間にある芝生の上。数人のダンサーが首に赤いレイを下げ、腰蓑を揺らしながらフラを踊っていた。確かコダック社の後援で、入場は無料だった。
フラメンコでもミュージカルでも、西洋人の踊りは屋内のホールでしか観たことがなかったので、屋外で踊るフラ・ダンスは新鮮に感じた。
フラ・ダンスのゆったりしたリズムがここち良かった。
ふつう踊りはスロー、スロー、クイック、クイックと、必ず速い動きが絡むのだが、フラはスローなテンポの繰り返し。跳んだり、ハネたりなど、派手な動きはいっさいない。
 
はじめから終わりまで、動作はゆるやかで大袈裟なところがない。
芝生の舞台。そのロケーションがすばらしい。
背景には背の高いココナッツの木。大振りの葉が、フラ・ダンスの踊りのように、ゆったりと風になびいている。
木々の間からは、淡いブルーの海が、陽射しを受けて輝いていた。
小麦色の肌、黒い髪、黒い瞳、長い手脚でしなやかに踊るハワイアン。
僕はすっかりフラに魅了され、ハワイにいることを実感した。
フラを観た後、近くのイリカイホテルのレストランでランチを食べた。
いまはどうか知らないが、このレストランのパンケーキがおいしいと、わざわざここへ朝食を食べにくる友人がいた。
ランチのあと、ホテルのショッピング・アーケードを散策中。僕はガラス・ケースに入っている高さ5センチほどのフラ・ドールを見つけた。
 
顔が大きく、身体が小さい3頭身の可愛らしい陶製のフラ・ドールだ。
僕は「これは、ハワイで作られたものですか」と、女性の店員に尋ねた。
彼女は「箱もないし、どこで作られたのかわからないけど、多分メイド・イン・ジャパンだと思うわ」と、答えた。
現在、ハワイの土産物はほとんど中国製だが、1970年代までは日本製が多かった。フラ・ドールの目や唇の描きかたは、どう見ても日本人が想像しながら描いたハワイアン顔だ。だから僕はこのフラ・ドールは、日本製だと思った。
ショップの女性店員は「フラ・ドールは、ここにあるものだけで、もう取り寄せることもできないの・・・」と、申し訳なさそうな表情をした。
ガラス・ケースには、よく見ると3種類のフラ・ドールが並べてあった。
大きさは同じだが、それぞれしぐさや表情、色、カタチが異なっていた。
どのフラ・ドールを買ったら良いのか迷うので、僕は3種類全部買った。
全部といっても1個が6ドルなので、たいした金額ではない。
それにフラ・ドールが僕の机にあったら、机の上がハワイの気分になり、フラ・ドールを眺めるたびにハワイを想いだすことができる。
安い買い物で愉しみは大きい。
だから雑貨はやめられない。
これがきっかけで、ハワイを訪れるたびにフラ・ドールに目が向くようになった。いまやフラ・ドール中毒。いつのまにか、30種類以上のフラ・ドールが、僕の部屋の飾り棚に並んでいる。

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