男の雑貨

天気がいい日は、中目黒。
文・写真 野呂珍平
 
男の雑貨
 
天気がいいと、人は外に出たくなる。
家の中でテレビを観たり、本を読んだりなんかしていられない。
なんの約束もない週末あたりに晴れると、午前中から夕方まで散歩に出かける。
僕の住まいは渋谷だから、近所には男の雑貨ごころをときめかせる街がたくさんある。下北沢、代官山、裏原宿、目黒、恵比寿、中目黒、表参道など。
嬉しいことに、これらの街が僕の家から自転車で20分圏内にある。
どこに行こうか迷うほどだが、最近は中目黒によく出かける。
中目黒は、以前は下町的なバタ臭い街で、これといった何かがあったわけではない。それが数年前から、住んでみたい街でもNO.5にランクされる魅力的な街になった。この街の変貌は、最初たった一軒の店からはじまった。
ある日、目黒川沿いにアメリカンスタイルの中古家具屋ができた。
その店は機能的でありながらどこか懐かしさを感じる中古家具をカリフォルニアから探してきた。特に椅子の品揃えは抜群。雑誌にも紹介され、多くの若者が訪れるようになった。すぐ近くにこの店の家具に合いそうなヴィンテージ・ショップができた。ヴィンテージ好きを対象に、アメリカンカジュアルの中古着を売るショップも開店した。
このようにして、目黒川沿いは、ぽつぽつと住宅がショップに変わっていった。ハワイアンスタイルのカフェやレストラン、手作りのパン屋もオープン。サーフィン、スケートボードなど横乗り系のスポーツショップも登場した。
 
国の行政や大手企業が造った街ではなく、住んでいる人がつくった街はおもしろい。目黒川周辺は、すべて個人商店。個人の感性、嗜好でショップを設計し商品を品揃えしている。ここで売っているモノは、もちろんデパートではみつからない。
僕は先日の散歩の途中、目黒川沿いにあるリサイクルショップで、ミニチュア椅子を見つけた。サイズは天地5cmくらいの小さな籐の揺り椅子。それを真鍮で曲げ加工して作った飾り用のミニチュア椅子。真鍮という素材が好きだから、結構気になった。
値札をみたら3500円。値段が高いのに驚いた。
この店は、リサイクルショップ。本物の座れる椅子を1500円で売っている。
そうした比較からも、この3500円は高すぎる。
僕はモノを買うとき、自分の価値基準をもっている。自分の価値基準を越えている場合は、どんなに欲しいと思う商品も買わないことにしている。
ミニチュア椅子に対する僕の価値基準は2500円。
僕は店主と交渉し2500円にならなかったら、買わないでおこうと思った。
さっそく値引き交渉。
店主は、僕を憶えていて「先日も買ってくれたから、2500円でいいよ」と、言ってくれた。「でもなぜ、こんなに高い値段になったんですか」と、僕が尋ねると。「仕入れ値が高かったので・・・でも俺もこの椅子が気に入ったから、つい引き取っちゃったんだよ」といって、店主が苦笑いをした。
こんな交渉ができるのは、お店が個人経営だから。
雑貨を買うときは、なるべく店の人と話をし、親しくなるのが買い方のコツといえる。

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