男の雑貨

心が癒されるブリキのおもちゃ。
文・写真 野呂珍平
 
男の雑貨
 
世の中には、心を癒してくれるモノがいろいろある。
海、山などの自然をはじめ、高原や公園の緑。それに音楽や絵画、映画、演劇と。数えあげたらキリがない。だが自分の部屋で眺めているだけで心が癒されるモノとなると、かなり限定されてくる。
僕にとって、心が癒されるのはやはり棚や机の上に並べてある雑貨である。
広告代理店時代。プレゼンテーションのために深夜の帰宅が続いても、家に帰ってほっとした気持ちになれたのは、好きで集めた雑貨が出迎えてくれたから。
雑貨のなかで僕がいちばん気に入っているのはブリキのおもちゃで、なかには40年以上と、つきあいの長いブリキもある。
カタチ、色、表情、動きなど、どのブリキもほのぼのしていて愛らしい。
ブリキのおもちゃは、40'年代から60'年代頃までアメリカ、ドイツ、イギリス、デンマークなどヨーロッパを中心に、先進国で製造されていた。
敗戦国日本も、外貨を獲得するためブリキのおもちゃを作りはじめた。戦後間もなく作ったブリキのおもちゃは、「すぐ壊れる」と、あまり評判が良くなかったが、50'年代からは技術的にも、デザイン的にもすぐれたブリキのおもちゃを生産。大量に輸出して日本の経済を支えた。
そんな歴史はともかく、ブリキのおもちゃを製造するメーカーは、国も、年代も異なるのに、どこの国のブリキも温か味があり、のほほんとした雰囲気がある。薄い鋼鈑に錫メッキを施したブリキは、素材が同じというだけで、どれもカタチや色の使い方が似通っている。人物のブリキは2頭身から3頭身と、頭でっかちなところがいい。8頭身などというスマートなブリキは見たことがない。それに色使いが鮮やか。赤、黄、青、黒といった原色を使っているからカラフルで華やかだ。
この時代には、まだデザイナーという職業は存在していない。日本ではデザインという言葉もなかった。多分ブリキのおもちゃは、絵のうまい職人が下絵を描いて製作したのだろう。彼らはまさにブリキのアーティストだ。
1950年代に作られた宇宙ものブリキおもちゃはすごい。手塚治さんもビックリの創造力で、ロボットや月面を走る戦車のようなクルマなどがつくられている。いまから半世紀も前に、こんなに未来的でロボットらしいロボットを考えた人を、僕は大変尊敬している。
ブリキのおもちゃは近頃値上がりし、骨董市やフリーマーケットでも見かけなくなった。鉄人28 号の初期のものは、30万円以上という高値で、宇宙ものブリキ・ロボットも50年代製なら10 万円以上する。こうなるとブリキのおもちゃは、雑貨やガラクタではなく、アンティークという分野に格上げされる。
ブリキのおもちゃはインテリアの飾りのひとつくらいに思っている僕にとって、値段が上がるのは不愉快なことだが、それは世の中の需要と供給によることでしかたがないことだろう。しかし「鉄人28号やロボットをもう少し集めたい。自分のものにしたい」。そんな僕の気持ちを察したかのように、最近、ブリキのおもちゃの復刻版を製造する会社ができた。
最初にゴジラや鉄人28号を復刻させた青山のビリケン商会ではなく、ブリキの復刻版を専門に作る会社が関西にできた。
嬉しいことに、その会社はブリキのおもちゃの売れ筋商品を昔と同じような行程で製作、販売している。僕はその会社のカタログを見ただけだが、鉄人28号も何タイプか復刻されていた。でもこれはすこし値段が高い。宇宙ものロボットは種類が豊富で、ほとんどが1万円。これくらいなら買える値段だ。他にも中国に製造を依頼している会社があり、こちらのロボットは2500円くらいと、グーンとリーズナブルである。
復刻版は嫌いという人は、アンティーク屋、雑貨屋、骨董市などを根気良く探してみましょう。偶然、掘り出し物に出会えることがありますから・・・。
まぁ、とにかくブリキのおもちゃは心のエステ。棚の上に3つ、4つ並べたのを眺めているだけで、不思議と気持ちがやわらいできますよ。

back
[HOME]