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ホーサンの菜園生活

ホーサンの菜園生活

文章・写真 保高博司
「真夏の太陽」

春先に大平洋にエルニーヨの発生が報じられ、これは間違いなく冷夏になると確信したら、案の定各地で日照不足となり、農家の方々には深刻な状況で、夏野菜が軒並み高騰しているようだ。

やはり真夏の大平洋高気圧が梅雨前線を押し上げる力もなく、いつまでも梅雨前線を日本列島に居座らせたままだった。そのため日照時間の不足でこの地域では低温注意報まで出た。
本来なら、7月に入り祇園祭の頃には大抵梅雨は明けたものだ。その後は間違いなく燦々と照りつける太陽を迎える夏になり、特に夏山や野外のキャンプなどは7月半ばから8月初旬が、最も天候の安定する好機と言われていた。

それが年を重ねるごとに自然の移ろいが大きく変化している気がしてならない。こちらへ越して7年目を迎えているが、淋しいことに間違いなく年々自然度が落ち続けているのだ。まず庭に住み続けていた生き物たちが減り続けている。越して来た年には五葉松から逆さまにぶら下がるように降りて来た蛇のご挨拶に出会い、翌年の住まいのリフォームにもそのアオダイショウは顔を見せてくれた。

蛇が住めれば当然蛙や野ねずみなどもいた。梅雨時になると縁側の網戸に小さなアマガエルが何匹も貼り付いていたし、トノサマガエルなども住んでいた。それが三年ほど前からアマガエルがいなくなってしまい、とうとう近くの田んぼへ出掛けて十数匹ほど捕まえて庭へ離したことがある。孫たちが夏休みに遊びに来た時、やはり淋しがるからだ。そのアマガエルも身体の色を変えて1〜2匹。それも稀に巡り会う程度である。

爬虫類に例をとれば、ちょっと庭を歩けば踏み付けてしまいそうになるほど、ニホンカナヘビがここが我が楽園とばかり賑やかに飛び交っていたものだ。ところが年々その数が減ってしまい、今年など僕もカミさんも確かめあう程出会うのが稀になってしまった。


キュウリ

色づき始めたトマト

パプリカ
 蝶や昆虫類も同じで、トンボも蝉も種類や数が年を追う毎に減って来ている。毎年我が家の庭は夏が近付くと蝉の出て来た穴が地面のあちらこちらに見れるのに、今年はそれが抜け殻も含めてめっきり減ってしまった。秋になれば抜けるような碧空に、よくもたがいをかわして飛びかえるものだと思える程の数のアキアカネが秋の景色だった。いまではそれも見れなくなった。

 ほんとの夏を迎えられないまま暦の上では立秋も過ぎて、早くも熱帯性低気圧・台風8号を迎える時期になってしまった。

我々子どもの頃の夏休みは今のようにゲームなどなかったが、周りの生き物たちはみんな僕らのよき仲間たちで、抱えられない程の夏の想い出をつくってくれたものだ。いま我々はいまの子どもたちのためにも、そんな美しくて愉しい自然を再び取戻してあげねばならない。我が家の庭の小さな自然の中で、哀しく代る変化に「ごまめの歯ぎしり」かも知れないが、真夏の太陽を取戻したくてこの緑だけは守って行こうと思っている。


サトイモ

鷹の爪

ミニトマト

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