ぽけ・び ビオトープ・ガーデンの楽しみ
〜トンボを呼ぶ庭を睡蓮鉢で作ってみよう〜
写真・文 森の人 泉 健司
あなたが住んでいる周囲でトンボを見かけたら、適切な水場を造ることで、 庭先でトンボの飛ぶ風景を楽しむことができます。 池を造る必要なんてありません。水鉢がひとつあれば、マンションのベランダでも大丈夫。
ウォーターガーデン、ぽけ・び!風、かな。(^^;
最近どこかの業者が一つ3万円から5万円もするビオトープ・ガーデンセットを発売して日経などで話題になっているようですが、ご自分で造るのであれば予算は5000円ぐらいからで、十分素敵な水場ができあがります。

 

■ポイント

1).ご近所のトンボ事情を調べる。

2).なるべく素焼きの睡蓮鉢を使う。

3).アシなどの水草を植える。

4).ヒメダカを5〜10匹。タニシを2匹。

5).餌を与えないで、ミニ生態系のバランスをとる。

6).あとは、減った分だけ水を足すだけ。

 
穏やかな水辺のコーナー造り

レースフラワーを食べるキアゲハの幼虫
涼しげな花の
シューティングスター

雨上がりに出来た道路の水たまりに尻尾をチョンチョン浸けながら飛んでいるトンボを見たことはありませんか。ムギワラトンボ(シオカラトンボの雌)や夏の終わりに山からおりてきたアキアカネ。

一頃ほんとに見かけなくなったのですが、最近では減反政策で休耕した水田跡地で繁殖したトンボたちが、町中に迷い込んできて、産卵場所が見つからないためにアスファルトの上に出来た水たまりに産卵してしまうのです。

もし、あなたの庭やベランダに池を作るのは無理だとしても、スイレン鉢を一つ置くだけで気の毒なトンボたちを助けることができるのです。
トンボの仲間は縄張りを主張する種も多いので、あなたの庭に住み着くことも多いのです。我が家ブランドのトンボなんていかがですか?

 
準備する物
  1. 素焼きのスイレン鉢 直径50cm前後
  2. 中仕切り用の小枝  直径前後の長さ、ふとさ1〜4cm
  3. 小石(伊勢錆などの表面がざらざらの物がよい)1/3袋程度
  4. 水草  日なたなら、クレソン、ガマ、アシ、イグサ、スイレン、ミソハギ、クワイ、パピルス、フサモなど 日陰なら、フイリゼキショウ
  5. ヒメダカ10匹前後
  6. タニシまたはモノアラガイなど2匹以上 好みでヌマエビなどもOK
 
1).ご近所のトンボ事情を調べる。

トンボは幼虫(ヤゴ)の時代を水の中で暮らし、羽化すると多くの種類は、一旦水辺を離れ林や原っぱで暮らします。そして繁殖期を迎える頃に再び水辺に戻り産卵するのです。

庭にトンボを呼ぶためには、まずトンボが周囲にいるのを確かめなければなりません。アキアカネのように、高い山まで長距離移動する種ばかりなら良いのですが、多くは縄張り周辺を行ったり来たり。近くにトンボがいないと呼べないのです。

レースフラワーを食べるキアゲハの幼虫
稲の葉につかまって、羽化
した ばかりのノシメトンボ。

2).なるべく素焼きの睡蓮鉢を使う。

確認ができたら、水辺を造ります。まず、直系50センチ、高さ20センチ程度の、できれば素焼きの水鉢を用意し、小石を入れます。素焼きは表面 からたえず水分が蒸発するので夏の日向でも水温が安定するからです。小石は少しでも十分ですが、伊勢錆の様に表面 がざらざらしたものがベスト。こういった石にはバクテリアがすみついて有機物を分解し、水質浄化に役立つからです。

3).アシなどの水草を植える。

トンボがとまって縄張りを主張するための、同時にヤゴが羽化する場所として、背の高いミズカンナ↓やシューティングスター(写真トップ)、お好みによってはガマやアシなどの水草を植えます。

このとき根洗いをして泥を落とすか、ビニルポットのまま植えると、アオコの発生を抑える事ができ水が濁りません。あとはお好みに合わせてヌマエビを入れて藻類を食べさせたり、ウキクサを浮かべて水温の上昇を防いでも良いでしょう。

レースフラワーを食べるキアゲハの幼虫 レースフラワーを食べるキアゲハの幼虫
ミズカンナ
おしゃれ工房で紹介したトンボの庭。
北アメリカや熱帯性部アフリカ原産の湿地に生える多年草です。
葉がカンナに似ているのでつけられた名前ですが、かわいい花が涼しげです。
低温には強く、関東地方以西では戸外で生育します。 
そろそろ水草を間引く必要が。少なくとも半分ぐらいは水面 が開けていないと、産卵しにくい。
レースフラワーを食べるキアゲハの幼虫
←イトトンボの仲間には水中の水草の茎に産卵するものもいます。志賀高原のミツガシワに産卵している様子です。下に潜っているのが雌。茎に産卵管を突き立てています。
 

4).ヒメダカを5〜10匹。タニシを2匹。

ヒメダカは、オスメス合わせて10匹程度ボウフラを食べ、ヤゴの餌にもなります。掃除係のタニシを2個入れ、キンギョ藻などの水草をセット。メダカの産卵に備えます。タニシは雌雄同体なので2匹いればどんどん繁殖します。

5).餌を与えないで、 ミニ生態系のバランスをとる。

維持管理のポイントは、外から餌を与えず、ミニ生態系のバランスをとる事です。餌を与えると水が富栄養化しアオコなどの藻類の異常繁殖の原因になるのです。水草、メダカ、プランクトンの間で栄養分のバランスがとれるようにするには、よけいな手出しはひかえて、ミニ生態系のエネルギー収支が安定するのをじっと見守るのが一番です。簡単に言えば、ほったらかしにすること。これに勝るものなし。次第に水が透き通 ってくるのを確認できるでしょう。

それでも、ミニ生態系のバランスは崩れやすいもの。ヤゴやヒメダカがふえ過ぎたら御近所にお裾分けして調整しましょう。

 
レースフラワーを食べるキアゲハの幼虫

←中仕切りを小枝などでつくって、半分だけ浅瀬にして小鳥の水浴び場を兼用することも出来ます。

浅瀬はひたひたになる程度。スズメの脚の長さに合わせます。

クレソンとミニ睡蓮を植えてみました。好みに合わせてパピルスなどを植えても涼しげでしょう。

 

これらの装置は、たまり水で繁殖できるシオカラトンボや、アキアカネ、ノシメトンボ、イトトンボの仲間などが利用できます。近くに林があれば、森林性のコシアキトンボがやってくるかもしれません。このトンボは水質汚染に強いため、最近都市部で良く見られる様になってきました。

オニヤンマや、カワトンボのように水が流れていないと繁殖できないものもいます。これらの種を呼ぶには、残念ながら広い庭にちいさな流れをつくる必要があります。公園や学校の一部など、まとまった面 積が利用できるのであれば、ぜひ試してみて下さい。

 
レースフラワーを食べるキアゲハの幼虫
溜まり水には呼べないハグロトンボ。
 
6).あとは、減った分だけ水を足すだけ。

素焼きの鉢はどんどん水分を蒸発させます。うっかりしていると、すぐに水がなくなってしまいます。頻繁にチェックして、水を補充しましょう。

庭に置くとき、浅く埋めておくとカエルも産卵にやってくるかもしれません。カエルが苦手な人はスタンドの上に乗せておくとよいでしょう。

 

泉 健司氏のホームページ「私のポケットビオトープ」
http://www.biotope-garden.com/
もご覧下さい。

プロフィール

いずみ けんじ
泉   健司
ビオトープ・ガーデン提唱者、植物生態コンサルタント、 自然造形作家 1954年愛知県豊橋市に生まれる。
東京農業大学農学科副手を勤めた後、環境アセスメント をはじめとした各種植生調査、フロラ調査の仕事に従事。 ビオトープ・ガーデンを提唱し、TVを初め様々なメディ アで紹介されている。またフラワーアレンジメントや自 然造形物を素材としたクラフト、コンピューターグラフ ィクス、環境音楽の制作など、多岐にわたる活動を行っ ている。
教育活動にも力 を入れており、東京バイオテクノロジ ー専門学校や東京医薬専門学校の非常勤講師も勤める。
農学修士。マミフラワーデザインスクール登録講師。


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