ぽけ・び ビオトープ・ガーデンの楽しみ
枯葉のにあう庭〜落ち葉はゴミではありません〜
写真・文 森の人 泉 健司
薫り高いヒアシンス、無邪気に春を告げるチューリップやクロッカス、アネモネ、数えだしたらきりがない秋植え球根の花たち。みなさんはもう植え付けはすませましたよね。

 ああ、春が待ち遠しい。でもちょっと待って、ひょっとしてプランターや植木鉢に球根を植えただけで裸の地面が顔を出したままになっていませんか?これでは、いくらなんでも春が待ち遠しすぎですよね?

 そこで、春までの長い時間をよりいっそう楽しくすごせるように、球根の他にビオラやユリオプスデージーのような、冬の草花を一緒に植えておくというのもひとつの手です。日当たりの良いところに飾っておけば、長い冬をチョウの姿のままですごすタテハチョウの仲間たちが遊びに来てくれますしね。

 それでも、やっぱり裸の地面が見えていたのでは、寒々しい。
 そこで、もうひとくふうしてみましょうか。
 落ち葉を使うんです。
 
北風にも負けずに咲く野生のフクジュソウの花。 北国の春は力強くさえある。 ねもとに落ち葉をしきつめてみると、ホラッなんだか早春の気配さえ漂ってきませんか?
 
べつに特別な物は何もいりません。公園や庭の隅にある枯れ葉をひろってきて、裸の土の上にそっとのせるだけ。それだけで、あなたのコンテナガーデンやプランターは、見違えるように自然な表情になります。これならかんたん、さっそくあなたも試してみませんか?
 

 ところで、ほんのちょっと落ち葉をのせただけで、どうしてこんなに雰囲気が変わってしまうのでしょうか?

 それは、人が自然に抱かれて暮らしていた、人も自然の一部だった頃の記憶を思い出させるからなのかもしれません。人間と自然が相対立するものだというようなヨーロッパ的二元論で、ぼくたちの心が引き裂かれてしまう前の記憶を呼び覚ますからなのかもしれません。

 いえいえ、そんな大げさなことでなく、早春の林の落ち葉の下から顔を覗かせる花たちを思い出させるからではないでしょうか? まだひんやりとした林の中を散歩していて、春初めての花を落ち葉の中に見つけた時の感動というのは、そう簡単に忘れられるものじゃぁありません。
 
北風にも負けずに咲く野生のフクジュソウの花。
北国の春は力強くさえある。
 
 そう言えばこの頃のナチュラル志向もあってか、都内のショーウィンドーや花壇などに、わざわざ落ち葉を買ってきて飾り付けるのが流行してきていますね。人工的な、ともするとあまりにも非人間的な町並みの中で、ふと目にする落ち葉は人の心を癒してくれる力があるのかもしれませんね。
もちろん、落ち葉の持っている力はそれだけではありません。都内の公園でも、花壇などに落ち葉を積極的に取り入れる動きが定着し始めているのはご存じでしたか。実は、この何でもない落ち葉が都内の環境を回復させる重要な手懸かりだったりもするからなのです。
 
落ち葉の中から顔を出すムラサキハナナ(白花種)。
代々木公園の「花の小道」でも気の早い春の花が。
 
 「落ち葉を掃いてはならん」というおふれを出して、たったの100年でまるで自然林のような森を回復させた明治神宮の話は世界的にも有名です。もっとも、それはあの広大な面積だからこそ可能なことでもあるのですが。もっと小規模で、身近な試みとしては代々木公園の「花の小道」がありますね。

 花壇の中に積み重なった落ち葉を積極的に残しておくと、霜や北風の害から冬の草花を守ることができるのです。落ち葉のふわふわのお布団のおかげで秋植え球根の生長も順調で、時ならぬ春の花が顔を覗かせたりするのも、この小道での楽しみの一つなんです。
 

モグラや小鳥のレストランにも。腐葉土をたべてミミズがいっぱいの土は、ふんわりやわらかくて植物たちの成長も上々です。
 
 もちろん、落ち葉は腐葉土として再利用できるだけでなく、様々な生き物たちの冬越しの場所にもなります。さらに、そこに隠れている虫たちを目当てにジョウビタキやムクドリ、キジバトたち、それにモズもやってくるようになるかも知れません。暖かな腐葉土の中には、コガネムシや、ひょっとするとカブトムシの幼虫も見つかる(新宿御苑の落ち葉の中からカブトムシの幼虫を見つけたときは、ホントにびっくりしました)かもしれません。落ち葉が環境回復に与える影響は、実はぼくたちの想像を遙かに超える重要性を持っていると、神奈川県立生命の星・地球博物館館長をつとめる青木 淳一(横浜国立大学名誉教授)先生も熱く語っています。

 ついでに書き添えるなら、地元で生産したものを地元で消費する、これはサスティナブルな循環経済のあり方の一つですが、同じ事は落ち葉の再利用を含めた地元の生態系での物質循環でも言えることなんです。 なんだか話が小難しくなってしまいましたね。
 
落ち葉をためよう
新宿御苑に造られた、落ち葉をためる庭。
低い生け垣の内側には、落ち葉がいっぱいたまっています。
 
 新宿御苑では、もっと積極的に落ち葉を利用しています。大きな木のまわりに、背の低い生け垣を巡らせて、その中に落ち葉をためる装置を作っているのです。これなら、落ち葉の掃除もらくちん。もっとささやかな規模の物を考えれば、ぼくたちの小さな庭でも十分応用できる方法でもあります。
 

 と言うわけで、庭の片隅に落ち葉を貯めておく場所を造りませんか?
 もちろん堆肥や腐葉土造りに欠かせない落ち葉です。もし面積などの都合が許すのなら、庭の隅や大きな庭木の下に落ち葉をためておくための囲いを庭仕事で出た小枝などを利用して作っておくのです。もちろん竹や廃材、ガーデニングショップなどで売っている折り畳み式のフェンスなどを流用しても良いでしょう。

 庭の小道の縁取りや大きな樹の根元を囲むように、せいぜい膝までぐらいの高さの低い生け垣を巡らせて、その中に落ち葉を貯めてしまうのも手です。グランドカバーにキヅタなどを這わせておけば落ち葉が飛ばされることもありません。そこに球根類を植えておけば、春先に木漏れ日の注ぐ落ち葉の間からヒアシンスやアネモネが顔を出して、いかにも早春らしい風情を演出してくれるはずです。ひょっとすると、ぶ厚い落ち葉の下では、カブトムシの幼虫が春を待って眠っているのかもしれません。 お子さんやお孫さんと、庭で昆虫探しの冒険を楽しめるように、今から準備してみてはいかがでしょうか?
 
落ち葉は庭のアクセサリー


 

泉 健司氏のホームページ「私のポケットビオトープ」
http://www.biotope-garden.com/
もご覧下さい。

プロフィール

いずみ けんじ
泉   健司
ビオトープ・ガーデン提唱者、植物生態コンサルタント、 自然造形作家 1954年愛知県豊橋市に生まれる。
東京農業大学農学科副手を勤めた後、環境アセスメント をはじめとした各種植生調査、フロラ調査の仕事に従事。 ビオトープ・ガーデンを提唱、TVを初め様々なメディ アで紹介されている。またフラワーアレンジメントや自然造形物を素材としたクラフト、コンピューターグラフ ィクス、環境音楽の制作など、多岐にわたる活動を行っ ている。
教育活動にも力 を入れており、東京バイオテクノロジー専門学校や東京医薬専門学校の非常勤講師も勤める。
農学修士。マミフラワーデザインスクール登録講師。


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