お花見の歴史

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[お花見の歴史]

我々は何故、桜をみると「お花見」と称した宴を開きたがるのでしょうか?花はこの世に数多くの種類が自生し、野生しているのに「お花見」は「桜」の固有名詞になっています。
中国やインドのほうが日本よりも自生歴が古いのに日本のように宴を催すことはありません。どうやら、昔から日本人は「桜」を農作物の収穫高と密接な結びつきを持たせ、また他の花と違う扱いで特別視し、祭り上げていたように思われます。今でもその風潮は引き継がれ、もはや「お花見」と言う行事は単なる暦のうえだけのものではなく、日本文化を象徴し代表する「伝統継承」として今でも花を愛でつつ酒を酌み交わす、この独特な宴会スタイルは近未来化した今でも代わることなく引き継がれています。と言っても引き継がれているのはどうやら、花を愛でる鑑賞会よりもむしろ満開の桜の下で、高揚した人々が一騒ぎする日本人気質のような気もしますが…。

大和高田市の千本桜
(写真提供:奈良県大和高田市)
青山墓地の桜

お花見の元来の趣旨は農繁期で忙しくなる前のひとときの憩いと、今年の豊作を祝う前夜祭という人々の食や生活と大変深い関わりがありました。 そもそも桜は暦のなかった時代に農作業をするにあたっての目安にしていました。今でも染井吉野が開花したらマリーゴールドなど20度前後で発芽するものが播けたり、八重桜が開花すると、ヒマワリなどの夏の花の種が播けたり、挿し木や植え替えの時期と判断をしています。また、桜の花があせていると夏の天候に恵まれ、白花が多いとその年は豊作になり、彼岸桜や寒緋桜が上向きに開花すると凶作になるといった豊作指数を占う重要なポジションを担っていました。その頃の宴は農民達の切なる思いが入り交じった重要な農事行事の一つでした。

平安神宮の桜

平安時代になると、政権を握っていた嵯峨天皇が敷地内に植えたお気に入りの桜が開花したのを記念して桜の下で歌会や舞いを踊る宴を催しました。 これが、当時の優雅で華やかな貴族の間で大変に受け、毎年盛大な宴を繰り広げました。

 

鎌倉時代に入ると貴族社会から武家社会へと変わったのを期に地方でも庭先に植えた桜で宴を楽しむことが普及されました。

吉野の桜
(写真提供:奈良県吉野町)

桃山時代になるとお花見の基盤がさらに定着化してきました。時の将軍、豊臣秀吉は風雅と贅沢をこよなく愛したため、奈良の吉野山に山桜を一面に植込んで盛大なお花見パーティーを催しました。桜の下でご馳走を食べ、酒を振る舞うという、手軽でしかも贅沢なこのお花見はたちまちに一般庶民にも広がり、上方では吉野山の山桜がお花見のメイン会場として毎年賑わいました。今でも吉野山の山桜はお花見のメッカとして、大変に親しまれています。

川辺リでのお花見

江戸時代になると今のお花見スタイルが確立されました。政権が徳川家になり、政治基盤が江戸に移ったのを期に、上野や隅田川の河川敷きに桜が大量に植えられました。

さらに、町民や商人が中心となる活気に満ちていた時代背景も重なって、老いも若きも武士も庶民も皆が楽しめるお花見へと大衆化していきました。

女達はここぞとばかりに化粧を施し、お花見のために小袖を新調するほど春のファッションは花見小袖が流行の最前線でした。
満開の桜の下で人々はござや敷物を敷いて、漆塗りの蒔絵のお重に詰められた豪華絢爛なお花見弁当をぱくつきながら、徳利酒でちょいと一杯。 ほろ酔い気分になれば多少の喧嘩も御愛敬。てぇやんでぃ、べらぼうめい。花より団子の江戸人気質はお花見にはもってこいでした。

江戸の中期になると長命寺の小僧が掃いても山のように積もる桜の落ち葉に手を焼き、考えた挙げ句、冬の間塩漬けにした葉であんの入った餅をくるみ、春の開花を兼ねて物見遊山の参拝客に配ったところ、爆発的な人気を呼んで、あっと言う間に'長命寺の桜餅'として商品化されました。関東の桜餅は小麦粉で作ったどら焼きの皮をちょっと薄く、柔らかくしたような感じですが、関西の桜餅は道明寺粉というもち米の一種をそのまま使用したおはぎ感覚の桜餅です。

今日の桜餅は3月3日の雛祭りに食べる習慣がありますが、そもそもはお花見のメインディッシュ。一度でもあの上品な甘みを醸し出す、なめらかなさらしあんとほどよい塩味のきいた葉が大きく丸みがかった大島桜の塩漬けの葉、桜色に着色され、ほのかに葉の塩漬けがうつったもちもちとした皮の絶妙な味わい。この三味一体が奏でる食感と味わいをぜひとも長命寺の桜餅なら染井吉野の下で、道命寺の桜餅なら山桜の下で塩漬けにした八重桜の桜湯とともに満喫したいものです。これこそがお花見の究極の極みかもしれません。


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